耕作放棄地の増加、農家の高齢化、獣害被害の拡大…など、小豆島でも農業生産地としての悩ましい問題が増えてきました。「このままでは小豆島の農業が廃れてしまう…」「親の代から守ってきた土地が荒れてしまうのは忍びない…」「自分が生まれ育った故郷が荒んでいくのがツライ…」そんな想いが募り、有志で集まり「小豆島長命草の会」を結成するに至りました。
「小豆島長命草の会」のメンバーは、島内で長命草を化学肥料や農薬を使用せず育てている5世帯の農家で構成しています。主にキク栽培の専業農家歴45年の私(須佐美純一)からの呼びかけで2016年4月に結成しました。会社を退職してから農業をしている熟年の生産者も多く、メンバーの最高齢は80歳です。
「しょうどしま長命草」に使っている肥料は醤油粕だけです。あとは年に2~3回程度、海水を散布するぐらい。本来、醤油粕は普通の野菜には向かないんです、塩分濃度が高すぎて。でも長命草は塩分を必要としているのでもってこいなんです。さらにアミノ酸・グルタミン酸など窒素肥料成分も醤油粕は持っています。廃棄するしかなかった醤油の搾り粕が、こうして島の中でリサイクルできるのはうれしいことですね。
ふだんから家でも長命草の乾燥粉末を毎朝、青汁として飲んでいます。じつは糖尿病と診断されていて、もちろん薬も飲んでいるんですが、医者に食事制限をしっかりやってますねとほめられました。数値も下がっているんですよ。粉末をお湯で溶いただけの長命草を飲む以外、何もしていないのに。内緒ですが甘いものもけっこう食べています(笑)。
サラリーマンをしたのち農家になって5年目のメンバーの一人は、長命草の粉末を麦茶などに混ぜて飲むこともあるそうです。クセもなく飲みやすい長命草の粉末は料理の応用範囲が広いと思うんです。
自分たちでも身体に良いものだと思うから一生懸命に育てられるんです。島の地元の人たちに、日本中の人たちに自分たちが育てた長命草を召し上がってもらえたらうれしいですね。
台風の時期には、沿岸沿いの果樹園や畑にも深刻な被害を受ける小豆島ですが、長命草は支柱などの事前対策も必要なく、むしろ台風がくれば長命草は元気になるしね(笑)。
長命草の苗を4~5月頃に植えて7月には第1弾の収穫ができるほど成長が早い長命草。1年を通して1ヶ月半ごとに4~5回は収穫できるようになってきました。長命草は年配の生産者でも簡単に栽培できる作物で、マルチをすれば雑草もそんなには生えません。手をかけずにほったらかしの状態でも育つし、収穫するときは鎌で簡単に切れるので苦にもならないんですよ。冬の寒い時期でも収穫ができ、昨年は1月にも出荷していました。それから…、小豆島では長命草の花が年中咲くんですよ。人参の花のような白くて可憐な花の蕾は、天ぷらにしても美味しいと農家ならではのおすすめレシピもあるんです。
現在、長命草の耕地面積は5世帯合わせて33アールあり、年間の生産量は約4トン。将来的に目標とする耕地面積は100~200ヘクタールです。小豆島もほかの地域同様に、高齢化が進み耕作放棄地も増加傾向なんですよ。だからこそ、「しょうどしま長命草」は健康に良いというだけではなく、荒れた畑を有効利用できる救世主の役割として、我々の中では期待しています。
長命草をつくりたいという人は、島内にまだまだたくさんいます。種も簡単に自家採種できますし、栽培もそう難しくありません。これからの小豆島を代表する作物にするために、まずは我々が長命草の栽培方法を研究し、島中に広がるようになればと頑張っています。